『ーーせっかく友達と楽しんでいたのに、なんでハッピーの散歩なんて行かなきゃいけないのよーー』
日課だった毎日の散歩は、高校に入って友達付き合いがさかんになったみちるにとって、徐々に邪魔な日課と感じてきていた。学校が遠いこともあり、17時すぎに散歩をするには16時台の電車に乗らなければならない。学校が終わるのが15時30分なので、散歩当番の日は友達と遊ぶ時間はたった30分しかない。
散歩は家族の中で交代でやっている。みちるの家は4人家族。だが父は単身赴任で家にいないので、実際は3人で交代していることになる。
『はぁ・・・こんなんじゃ友達の話題についていけないじゃん・・・』
親に無理をさせてまで県外の高校ーーしかも、そこそこ偏差値の高い進学校ーーに通わせてもらっているのだから、ワガママは言えないが。
「ただいまー」
ドアを開けて気だるそうに言うと、リビングで寝ていたハッピーが『楽しみ♪』という顔で出てきた。だが笑顔で「ハッハッ」というハッピーに、みちるはほんの少しだけ、『ウザったい』と感じてしまったのだ。
『あんたのせいでこっちは友達と遊べないっていうのに・・・』