10年後ーー
みちるは結婚し、6歳の娘と3歳の息子を持つ母になっていた。
「ねえ、ママー」と、娘・幸知(さち)が言う。
「どうしたのー?」と聞くと、「なんでお庭にお墓があるのー?」と、庭先にある、他より土がもっこりした部分を指さす。
「ぼくも、ぼくもー」と、みちるの手をぎゅっと握る息子・幸太郎(こうたろう)も話に加わる。
「あれって、誰のお墓なのー?」
「あのお墓はね、ママの家族と、お友達と、相談相手のお墓なのよー」
「なんでそんないっぱいいるのぉ〜?」
「んー、それくらい、あの子はママにとって大切な子だったのよ〜」
「ぼく、しってるよ!あの、お写真の子でしょ?」
「こうちゃん何言ってるのー?あのお写真はワンちゃんのお写真だよ?」
「幸知〜、実はあの子なのよー」
「ええええ!じゃあ、あのワンちゃんが、あそこにいるの?」