別にいじめられているわけではない。ハブられているわけでもない。たまに声をかけてくれる子も何人かいるし、授業のグループ決めだって余るわけでもない。ただ、人見知りな性格故に会話が続かず、相手の目を見て話すことも出来ないのだ。そのことを知ってか、クラスの大半の子は必要最低限のこと以外はみちるに話しかけずにそっとしている。みちる自身もその対応に不満はないし、むしろそれで良いとすら思っている。けど、やはり心のどこかでは「1人は嫌だ」と思っているのだ。

「はぁ・・・。毎日何やってるんだろ、私・・・」
ため息混じりに独り言をつぶやくと、みちるは神社の境内を出た。
「ただいま・・・」
「ん、おかえりみちる」
「ひーちゃん・・・帰ってきてたんだ」
『 ひーちゃん』こと『ひかる』は、みちるの3つ年上の姉だ。
まだ17時にもなっていないのに、なぜ帰ってきているのか・・・
「ひーちゃん、なんで帰ってくるのこんな早いの?」
「あー、今日からテスト期間だから部活が休みになってんのよ」
へー、と返事をして手を洗いに行くと、母がご機嫌顔で「あらー、みちるお帰り♪」と笑顔で言ってきた。みちるは不気味に思いながらも「ただいま・・・」と返事をした。