休憩時間が終わるまで、僕と貴久はその話の具体的な内容のことを話し合っていた。

だけど、そこで決まった内容は「行き先はカラオケ」それだけだった。


「詳しいことはお前に任せるから」と、いうのが彼の最終的な意見だった。

つまり彼は「いつでもどこでも大丈夫」と、いうことなのだろう。


昼休憩の時間が終わりに近づいて、僕たちはレジに清算に行った。

レジは美貴の仕事だったから、僕はその時に、彼女に「話がある」と伝えるつもりだった。


先に、貴久に清算を済ませてもらい、僕はレジの前に立った。


「どうしたの?今日は二人で何か楽しそうだったじゃない」


『うん♪まあね。……はい500円で』


「はい♪」


彼女は僕の500円を手の平で受け取り、レジに入れ、ガチャガチャと鳴らしながらお釣りの180円をドロアーから取りだした。


「ね、今晩、家に居る?」


僕が言おうとしていた言葉をわかっていたかのように、美貴が僕にそう訊いてきた。

それは僕のセリフのはずだった。

予想外の彼女の言葉を聞いて、僕は言葉に詰まった。


『え!?あ……う、うん』


美貴は少し肩をすくめ、上目使いで僕の方を見た。


「あ、ごめん……なんか用事とかあった?」


『いや、ううん……そんなんじゃないんだ』


「そう?」


『じゃ、今晩10時頃に電話するから』


「ほんとによかったの?」


『うん、もちろん』


そう言って彼女が差し出したおつりを受け取り僕は喫茶店を後にした。

妙なことになってしまい、彼女に余計な気を遣わせてしまった。

でも、とりあえず電話の約束は出来たわけだから、僕は自動ドアの傍で待っていた貴久にそのことを伝えて職場に戻った。

後は、今晩、僕が彼女にこのことを話すだけだ。