その言葉を聞いた瞬間、僕の胸に激しい衝撃が走った。

千鶴からベルが鳴ったあの時……僕は嬉しさのあまり、そのことに気付いていなかった。

僕のベルの番号を知らないはずの千鶴から、ベルなんて鳴るわけないのだ。

つまり、誰かが千鶴に僕のベルの番号を教えたということになる。


「ごめんね……智」


美貴は俯いて、僕の腕を掴んだ。

その手は小さく震えていた。


『美貴さん……そんなに謝るようなことじゃ……』


「私、いつか言ったよね……私はただ少しでも智の支えになりたいって。辛い時とか、寂しくなった時にそばにいてあげたいって。」


僕は美貴のその言葉をはっきりと覚えていた。

そして、その言葉を思い返す度に、胸がキリキリと痛むのだ。


彼女の息が少しづつ荒くなってきて、僕の腕を掴むその手にも力が込められてきた。


「だけど、こんなんじゃ……、こんな私なんかじゃ駄目だ……」


その声は涙混じりだったけど、彼女はその体全身で堪えようとしていた。

僕には、美貴の涙の理由がわからなかった。

彼女をそこまで追い詰めているものはいったい何なのだろうか。