そう言った美貴の反応は、僕が思っていたのと違った。

それはまるで、今日僕がここに来て、この話を自分にすることを知っていたかのようだった。

その台詞も、彼女の中であらかじめ用意されていたようだった。

そうやって彼女は、自分に対する僕の罪悪感を和らげようとしてくれているのだ。

自分はもっと辛いはずなのに……彼女はいつだってそういう人だった。


『ごめん……美貴さん』


顔を上げた彼女は、僕を真っ直ぐに見つめて、忙しく瞬きを繰り返しながら微笑んだ。


「ううん、いいの。謝らなきゃいけないのは私の方かも……」


僕には彼女の言葉が全く理解出来なかった。


「智が選んだのは私じゃないのはいいとして……」


『う、うん……』


「どうして千鶴だったの?」


『え?どうしてって……』


「やっぱり……気付いてないのね?」


『え?な、何を?』


彼女はひとつ溜め息のように大きく息を吐いた。


「ごめんね、智……私、全部知ってたのに……」


美貴は一度視線を僕の口元に落とした。

だけど、すぐに僕と目を合わせて言った。


「智のベルの番号……千鶴に教えたのは私なの」