それから少しの沈黙があった。

時計を見ると、もう朝の4時だった。

もうすぐ夜が明ける。


「話……」


美貴がボソッと言った。


『うん……』


「聞きたくないって言ったら?」


『駄目だよ……もう後悔したくないんだ』


僕がはっきりと言い切ると、美貴は静かに答えた。


「そっか……。じゃ、聞かせて?」


僕は頷いて、シートに座ったまま体を美貴の方に向けた。


『美貴さんが今、俺のことをどう思ってるくれてるのかはわからない……けど、俺は美貴さんが前に言ってた通り……千鶴のことが好きだ。だから……』


「うん……」


美貴は俯いて、膝の上に置いてある指先をじっと見つめながら、僕の言葉に何度も頷いた。


『だから、俺は千鶴に告白しようと思ってる』


「うん……」


『千鶴に告白する前に……美貴さんにちゃんと俺の気持ちを伝えておきたかったんだ』


彼女はピクリとも動かなかった。

ただジッと指先を見つめていた。

僕はそんな美貴の横顔を見つめながら、彼女との思い出を思い返してた。

楽しかった……彼女と出会って一緒に過ごした時間は、僕にとってかけがえのない思い出になるに違いない。

でも、それは恋ではなかった。

そのことに気付いていたのに……僕は彼女を傷つけてしまった。

もう後悔はしたくない。


「そっか……そうだよね!!それは……私もそうしてもらわないと困る!!」


美貴は目の縁に溜まった雫を指先でそっと拭ってほほ笑んだ。


「智……ありがとう。なんか……吹っ切れた!!でも……智はヒドイ奴だよ。そうやって誰にでも優しいから……いっぱい人を傷つけるし、自分もいっぱい傷ついちゃうんだよ」