だけど、僕は彼女に気持ちを伝える。

結果はわかっていても、人を好きになってしまったら、結局、人はその気持ちを相手に伝えることでしか前に進めない。

それ以外に、行き場もやり場もないのだから。

どんなに遠回りしたって、彷徨ったって……辿り着く場所は一つしかない。

美貴の僕に対する気持ちがそうだったように。

僕の千鶴への思いもそうなのだ。


だから、「好き」という気持ちを伝えられた人は、その相手の気持ちを素直に受け止めて、次の道標を伝えてあげなければいけない。

それができるのは、「好き」の気持ちを受け取った人だけなのだ。

でなければ、「好き」という気持ちはその人の心の中で行き場を失くし、いつまでも彷徨い続ける。


僕は美貴に中途半端な優しさをみせて、それができなかった。

わかっていたはずだった。

でも、傷つけたくなかった。

それが優しさだと勘違いしていた。


だけど今、自分が美貴と同じように、「好き」の気持ちの行き場を失って初めてそのことに気付いた。

だから僕は、美貴の気持ちとその全てをを受け止めて、彼女に自分の気持ちを伝える。

それが美貴への本当の優しさであり、彼女の道標になるのだ。


そして僕は、僕の「好き」の気持ちを伝えるために千鶴に会いに行く。

それが僕の、「好き」の気持ちが辿り着くべき場所への道標になるのだから……。