僕は千鶴の方に首を傾けた。

すると、千鶴は僕の方に首を傾けていた。


『何?』


「今日は……このまま一緒に居ていいんだよね」


『うん』


「本当?」


『うん』


「じゃ……」


続きの言葉を口に出すのを躊躇いながら、千鶴は僕から目を逸らした。


『どうしたの?』


「あのね……」


繋いでいた彼女の掌が熱を持ち始め、頬がゆっくりとピンク色に染まっていくのがわかった。


「あのね……」


『うん』


千鶴はゆっくりと唇を開いた。

だけど、そのわずかに開いた唇から、なかなか次の言葉は聞こえてこなかった。

長い沈黙の後、彼女は静かに言った。


「キス……」


聞き逃してしまうくらい小さな声だった。


「キスしよっか」


『うん』


僕は何の迷いもなく頷いた。