次の日、僕は千鶴との約束通り、電車で出勤した。

今日のことを考えると、仕事にもやる気が出て、いつも以上のスピードでこなすことが出来た。

その日、僕は定時の18時に仕事を終わらせて、急いで着替えて店を出た。

駆け足で駅に向かい、電車に乗る。

千鶴の寮がある最寄りの駅に行くには、2回ほど沿線を乗り換えなければいけなかった。

僕の職場から、距離にしたらそんなに離れている訳ではなかったのだけれど、乗り換えがある分、時間がかかった。

電車を降りた時、陽は沈みかけ、辺りはオレンジ色の落陽に染まり始めていた。

各駅停車しか停まらない、小さな駅舎だった。

僕は、改札を出てすぐにある公衆電話から千鶴の寮に電話をかけた。

これから千鶴に会える、という緊張と喜びで、受話器を持つ手が自然と小刻みに震えた。

ドキドキする。

2回くらいのコールで彼女は出た。


『も、もしもし?』


「あ、智?もう着いたの?」


『うん。急いで仕事終わらせたんだ。』


「あははっありがとう。じゃ、今から迎えに行くから、ちょっと待ってて」


『う、うん。待ってる』


電話を切ってから、わずか10分くらいで彼女は現れた。

本当に「ちょっと」だった。