『どこ行く?港以外で……』


僕は一応そう付け足した。


「ほんとどこでもいいよ。智がいい所で!!別にここでもいいし……」


『ここ?』


「うん、ここ」


『ここって?』


「この家」


『そこ?』


「ここ」


『そこにお泊り?』


「え?あ、うん。そういうことになるのかな」


千鶴は冗談っぽく笑った。


『そんなことして大丈夫なの?』


僕の頭に浮かんだのは、この時もやっぱり千鶴の彼氏のことだった。

だけど千鶴の返事は全く違っていた。


「うん、全然平気。ここには管理人さんも居ないし……同居人も居ないし」


彼女は平然と言った。

そして「何か問題ある?」とまで付け足した。

取り乱していたのは僕だけだった。

理由はそれだけではない……付き合ってもない二人がお泊りをしてもいいのだろうか。

僕たちは友達である前に、一人の男と女なのだ……。


でも僕にとってこんなに嬉しいことはなかった。

だって好きな子の家に泊まりに行くのだから。


僕が言葉を濁していると彼女はまた平然と言葉を返してきた。