私とりょー君の思い出の曲。
大好きだったあの曲。
その曲をあの声で歌った井原君なら。
ボーカルを任せられる。

「私軽音部でバンド組んでるんだけど、ボーカルがいないの。井原君にぜひ、やってほしい」

「なんでだよ。他あたって」

帰ろうとする井原君。
どうしよう、なんとかして説得しなきゃ……!

「柚葵の会いたい」

「……っ!?」

「井原君が歌ってた曲だよね。私もその歌好きなんだ。離れ離れになっちゃったけど彼女を思ってる彼氏の歌。とってもいい曲。井原君もそう思うでしょ?」

「あ、あぁ」

「そんな曲をね、井原君はすごいいい声で歌ってたの。感動したよ、私。その歌声、みんなに聞かせなきゃ。そのままにしてたらもったいない」

どうしても、どうしても井原君に歌ってほしい。

「あなたのその声、私たちに貸して」