あの時…―――
"夕方はしばらく
ここで釣りしてるから"って
魔法使いは、言ってたのに
行かなかったのは わたしだ…
夕日の入る
オレンジ色の 窓際
椅子ひいて、ドカッと座った
魔法使いの真っすぐな目は
絶対ちょっと怒ってて…
そらしたいのに、そらせなくて
胸 ドクドクして、ギュッとなる…
… 溺れてた時も
こんなに、ならなかったのに…
「――… 欲しい物は?」
涙
ボロボロ出て来る……
「いいから 言ってみな」
うなるみたいな 声しか出ないよ…
欲しいものは
新しい水着
ピアスも あけてみたいな
新しい服
欲しい物は、たくさんあって
だけど、考えているうちに
それは全部
誰かから聞いた言葉だって
気がついた ―――
―――… 欲しいもの
学校… 行きたい
テスト どうしよう
友達
歌
たくさん出て来る
涙の奥から
やっと出て来たキモチは
たった それだけの…―――
「お 一個、叶った」
―――…… え