やっと泉 千春の治療が本格的に出来るようになって、不謹慎にも少し…いや、かなり浮かれていた。
今までは記憶が思い出せなかった為、心の奥底までは中々触れられなかった。
他人が人の本当の心を知ることは医者だとしても到底無理な話だ。
だが、近いところまでは知ることが出来る。
それが堪らなく感じる。
「彼は治療を受け入れてくれるだろうか………。」
「断られそうなんですか?」
白金くんが紅茶を持って入ってきた。
「いや………でも、分からない。かなりショックを受けているからね。治療を拒絶するかも知れない。」
「拒絶………ですか。…でも、それじゃあずっとあの症状に悩まさせられるのでは?一緒にいられる方も、相当苦労するんじゃありませんか?」
「それは言うまでもないよ………。酷なことを言うようだけど、どちらかしかない。」
「どちらか?」
「治療を拒絶すれば自分が大事。トラウマに立ち向かおうとすればそれが早ければ早いほど、必死でなりふり構わなければ構わないほど花枝さんの事が大事だと言う事です。」
「どちらにしろ苦しいですね………。」
「花枝さんはどちらにしろ全て受け入れて彼の傍にいる覚悟だろう。」
「それじゃあ、泉さんの覚悟は?」
「それは………………ー」
ジャケットの内ポケットでバイブが鳴る。
「誰からですか?」
「………さて、どう出るか。」