「千春さん…。千春さんはどうしたいの?千春さんがしたいようにしていいよ。あの人に関わりたくないなら治療も止めて、このまま二人で暮らそう。私はずっと、傍にいるから。」


「花枝…。」


花枝にここまで言わせて、何も答えられない俺は、なんて弱虫で情けない男だろう。

彼女とずっと一緒にいたいなんて言っておいて、自分のトラウマに打ち勝つ勇気さえ持ち合わせていない。

これじゃ駄目だ。

只、彼女に甘えているだけだ。

一体どうしたらいい………。

あの人を思い出すだけで見る見る手が体が震えだす。

俺は汚い。

心底汚れている。

こんな汚れた俺が綺麗な花枝に触れていいはずがない………。

俺は考えれば考える程、土坪にはまっていった。


「千春さん…?どうしたんですか?やっぱりまだ具合悪いんじゃ………。」


「いや、平気だよ。今日だけでいい………このまま隣で眠ってくれないか?君が隣で眠っていると俺もよく眠れるんだ。」


「はい。」


俺の言葉で一喜一憂する彼女はとても可愛くて愛しい。

今もハニカミながら俺の腕の中にすり寄ってきて、嬉しそうに瞳を閉じている。

半年もずっと、触れる事さえ叶わなかった花枝を胸に抱いて、俺は熱いものが込み上げてきた。

こんな俺をまだ好きだって思ってくれている。

柔らかくマシュマロみたいな彼女をぎゅっと抱き締めた。


「千春さん…苦しいよ…。」


「………ごめん。」


眠っている間に彼女が消えて無くならないように、俺は彼女を腕の中に閉じ込めた。