先生とお義母さんが久しぶりの挨拶を交わしている間、私は紅茶を入れ直していた。
本当の事をゆうと、千春さんの酷い身体の状態から考えると、過去の話を聞くのは怖かった。
でも、一番怖くて苦しんでいるのは彼なのだ。
長い間ずっと独りで、理由も分からないトラウマに怯えて生きてきた。
相当辛かった筈だ。
人知れず未来に絶望する事も何度もあっただろう。
私には想像すら出来ない世界で生きていたのだろう。
そんな中で勇気を出して私を選んでくれた。
だから私は千春さんを助けたい。
救世主?そんな事、クソクラエだけど、なってやろうじゃないっ!!
誰にだって負けないっ!!
私は思いっきり両頬をバチンと叩いて気合いを入れてリビングへ向かった。
「それじゃあ、話して下さい。」
私を確認して、黒木先生がお義母さんに促した。
「はい。あれは千春が小学校5年生の時でした。本を読むのが大好きな子で、毎日の様に主人の書斎に行っては本を読み耽っていました。あの日は新しく入った使用人にたまに千春の様子を見に行くように言付けて、私も主人も別々の用事で家を空けていました。…………それがいけなかったんです。」
「もしかしてその新しく入った使用人が…?」
「はい。千春に悪戯したんです。………………私の主人の身代わりとして。」
「!!!」