考えれば考える程、考えは恐ろしい方向にしか進まない。
真実を知るのが怖い。
真実を知れば俺の大事にしてきた全てが、崩れて壊れてしまう様な気がしてならなかった。
一方で真実を知らねば花枝を手放さなければならくなることも分かっていた。
八方塞がりのまま、時間だけが過ぎて行った。
「後、半年………。」
苛立ちだけが残り、震える手でデスクを強く殴った。
振動でガタンとケータイが跳び跳ねると着信が鳴り出す。
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ディスプレイを見ると黒木先生だった。
「もしもし………泉です。………今日ですか?………すいませんがこの後パーティーに行かなくてはなりません。………はい。では明日…。ええ………。」
黒木先生からの電話は次回の診療についての事だった。
何が進展でもあったのだろうか、少し興奮ぎみに話していた。
結局は大した進展もしないのがいつものパターンだった。
申し訳ないが黒木先生の呼び出しにも最近うんざりしていたのは事実だ。
少しの事で黒木先生は『大きな進展です!』とよく言ってくれるが、俺にとっては蟻の一歩の様で程遠く感じ、希望が見えなかった。
「この体さえまともに動いたら………直ぐにでも花枝を迎えに行けるのに…。」
言葉にして彼女の名前を呼んでみると尚更恋しさがつのった。
「………名前呼んだの………久し振りだ………。」