誰かの所為にして楽になりたかったのかも知れない。
結局、楽になる処か余計に罪悪感がつのっただけだった。
「………千春さん…………会いたいよ…。」
私はいつの日か座り込んだ、マンションの外のベンチに座っていた。
泣いて、泣いて、涙が枯れるまで泣いた。
鼻水を啜りながらやっと腰を上げた時だった。
「花枝ちゃん?」
「…………お義母さん…?」
「やっぱり花枝ちゃんじゃない!!近くまで来たから寄ってみようと思ったんだけど………………………どうしたの?その顔…。取り合えず…上げてくれる?」
「………はい。」
結婚式以来お互いの予定が合わなくてずっと会っていなかったので義理の母親が訪ねて来るのは初めてだった。
千春さんのお母さんは結構アグレッシブな人で多趣味だ。
いつも何処かに出掛けていて人生を謳歌している。
夫婦で出掛ける事も多く仲がよくて理想の二人。
「千春はいつも遅いの?」
「はい。………お義母さんコーヒーにしますか?紅茶と緑茶もご用意出来ますが?」
「やぁあね!そんなかしこまった言い方しないでよ!私達は家族なんだから。」
「…すいません。」
「千春もたまには早く帰って来ればいいのにね?新婚なのにまったく男って分かってないわよね?」
「………いいえ。そんな事無いです。千春さんは頑張ってくれてます。どんなに遅くなっても…必ず………ちゃんと………私の元へ帰って…来てくれ…ま…す…。」
我慢すればする程喉の奥に何かが詰まった様に言葉が途切れ途切れになった。
私はもう限界まで来ていたのかもしれない。
お義母さんは大きく息を吐き出すと俯いている私を覗き込んだ。
「もういいわ………。何があったの?私に話しなさい。」
お義母さんは私が話せるようになるまで、まるで子供でもあやすように背中をトントンと叩いてくれた。