「………あの、少しお話ししてもいいですか?」


「はい。何でしょうか?」


「泉さんのプライバシーに触れてしまって申し訳ないんですが、私、あなたの病の事、実は知っているんです。花枝に聞きました。勿論、誰にも口外はしてません。」


「そうだろうと思ってました。私よりあなたの方が妻をよく知っているから当然です。構いません。」


「夫婦の事に立ち入ったこと言いたくないんですけど、花枝の幸せの為に言います。もし、このままあなたの病が治らないなら、花枝を自由にしてあげてくれませんか?今すぐにとは言いません。期限を作って欲しいんです。………………あの子も今年で29歳です。分かりますよね?女には猶予が無いんです。あの子にも普通に子育ての幸せを味わって欲しい。」



「………………………………………。」



「あの子が泣くのをずっと見てきました。今まで泣いたことなんて数えるくらいしかなかった子が結婚した後、泉さんと何かあるたびよく泣きに来てました。あなたの前ではなるべく泣かない様に努力してました。もう、あんな健気な姿見たくないんです。」


「きっといつか妻の親友のあなたには、こうゆうことを言われるだろうと覚悟していました。私のわがままで始まった結婚です。その責任は果たします。」


美味しかったはずのコーヒーは何故か途中から味がしなくなった。


「後、一年………。一年だけください。」