「今から、花枝ちゃんが来るかも知れないから、少しだけここに居てもいいかな?」
「うん!!いーよ!!花枝ちゃんの秘密教えてあげてもいーよ!」
「秘密?」
「こら!拓海!変なこと言わないの!!」
「えへへっ!怒られちゃった!!」
拓海君はそう言いながらも俺の方へ歩いてきて耳打ちした。
「ママが居なくなったらこっそり教えるね!」
「えっ?」
子供の言う事だからと思いながらも気になってしょうがない。
促されるままソファーに腰を掛けた。
暫くすると、コーヒーの良い香りが漂ってきた。
「私の自慢のコーヒーです!よかったらどうぞ。」
「すいません………突然押し掛けて上がらせて貰った上にコーヒーまでいただいて。」
テーブルの上に置かれたコーヒーは温かい湯気がたっていた。
(花枝のコーヒーも美味しいんだよな………。)
「どうぞ…温かいうちに召し上がってください。」
「はい。」
一口飲むと苦味の少ないまろやかなコーヒーでとても美味しかった。
少し緊張気味の心がほぐれて肩の力が抜ける。
「とても美味しいです。」
「それは良かったです。」
花枝とは違った明るい笑顔で彼女は笑った。
見た目はとても可愛い人だけれど、彼女には何かしっかりとした芯の様なものがある。
二人の子供を育てている故だろうか?
いや、恐らく彼女の気性を表しているのだろう。