「確かにあなたの泣き顔は惹かれるものがありますね。泉さんもこれにやられたのでしょうか?」


「はい?」


突拍子もない言葉に面喰らう。


「フフフッ………不謹慎でした。忘れてください。」


「??」


珍しく破顔して笑う黒木先生が不思議で魅入ってしまう。


(先生もこんな風に笑ったりするんだ。ドSのくせに結構可愛いとこあるじゃん………。)


ボーッとしながらどうでもいい事を考えてみる。


「泉さんの気持ちが分かりませんか?」


「そんな事、本人じゃないと分からないじゃないですか?」

「当事者はそうゆうものですよね。不思議なものですね。」


「黒木先生………何なんですか?何が知ってるんですか?」


「いえ、私の勝手な予測です。」


「えっ?」


「いや、私も反省しました。真実は本人の口から聞かないと信じちゃいけませんよね。フフッ………これだから人って面白い。」


「もぅ………意味わかりません!!」


黒木先生は立ち上がり、ブランケットを手に取ると私の膝に掛けてくれた。


「顔色が悪いです。10分だけ眠りませんか?泉さんから返信があったら直ぐ起こしますから。」


「10分………ですか?」


(10分くらいならいいか………。)


「ほんの少しです。」


「………分かりました。お言葉に甘えます。」


私はソファーの背もたれに寄り掛かると瞳を閉じた。








彼女の寝顔を見ながらそっとブランケットを肩まで引き上げる。

顔に掛かった髪の毛を払うと日頃とは違うあどけない顔が出てきた。


「すいません………あなたに重荷を背負わせました。目が覚めたらきっと上手くいくから………今はゆっくり眠れ………ねむり姫………。」