「ちょっと!!泉CEOよ!朝から会えるなんてラッキー!」
会社のロビーを歩くだけで結婚した今も、女子社員が騒ぎ立てる。
そんな事は俺には最初から何の意味ももたない。
誰もが皆、同じに見える俺の世界。
俺の肩書や見てくれに恋する女性。
最初はそうゆう女性全てを軽蔑していた。
しかし、よく考えてみると彼女等は動物としての本能に、忠実に生きているだけ。
ある鳥の雌はより良い巣を持つ、見た目の綺麗な雄を好む。
全ては、自分の子孫を繁栄させる為。
それじゃあ、雄として欠陥のある俺は一体何の意味がある?
彼女達には必要とされない存在だ。
「彼女は、俺の何処が良くて一緒に居てくれたんだろう……。」
こうして改めて考えて見ると彼女は、とても不思議だ。
俺が不良品だと分かった後も離婚せず、一緒に病を治そうとまで言ってくれた。
それなのに俺は彼女に酷いことを言ってしまった。
あの時、花枝さんがキスをされている所を見た時、どうしようもないドロドロとした怒りが込み上げてきて、どうしても冷静に彼女の話を聞く事が出来なかった。
無理矢理にでも口づけて彼女の唇を俺で侵してしまいたかった。
それなのに俺のこの身体は拒絶してしまった。
このまま帰って来なかったら自業自得だろう。
俺には引き留める資格もない。
今日は仕事も手に着かないし、何もしたくない。
こんなこと初めての経験だ。
どんな事があっても、仕事さえしてれば気が紛れた筈だったのに………。