「部長おはようございます!これ、お土産です!」


いつものコーヒーと一緒に、お土産の高級チョコを添えてデスクに置いた。


「おはよう花枝ちゃん。二人でホテルを満喫出来たかい?」


ズキンと鳴った胸の痛みを無視して笑顔をつくる。


「はい!部長のお陰で凄く楽しめました!ありがとうございます!」


部長の計らいに心からお礼をした。

途中までは最高に楽しかったのは事実だし、全部を嫌な思い出にしたくなかったから。


「あれ?何か少し目が赤くない?」


「いえ。ちょっとアレルギーで……。」


「そう。花枝ちゃんアレルギー持ちだったっけ?初めてじゃない?」


「そうかもしれません。」


「辛くなったら、私に言いなさい。……何でも。」


部長は含み笑いをすると、チョコを一つ、摘まんで私の唇に押し付けた。


「はい、あ~ん。」


「部長!何するんですか……それは……部長に買ってきた物で……」


「ほら、口開けて、甘いもの食べると元気になるからね~!」


「私は別に元気ですよ!」


「いいから、口開けて。」


この人の優しい瞳に見つめられると、何故か嫌と言えない。

きっと、これが年を重ねた大人の魔法なのかも知れない。