静かに眠っていた地上が、太陽の光を遮る午前5時。
アールグレイに白みがかったようなこの空は、わたしをまた、憂鬱な気分にさせた。
はぁ…と小さく吐くため息は、より一層、わたしを現実へといざなっていくようで鼻の奥がツンとする。
たった9畳のワンルームの賃貸アパート。
決して眺めがいいとは言えない二階のベランダから、夜露で湿ったインナーを取り込み腕を通す。
制服に着替え、歯ブラシを咥えたまま食パンを一枚トースターの中に放り込むと同時に、肩までしかない寝ぐせのついた髪の毛をとかした。
同年代の女の子は、ヘアアイロンをあてたり巻いてみたりするんだろうなぁ、なんて思っても、わたしの部屋にはそんなものはない。
生まれつき色素が薄く、茶色がかったわたしの髪は、これも持って生まれたものなのか、緩くカーブがついたくせっ毛。
……この髪も、事の発端の一つの要因だったんだろうなぁ。
「はぁ…」
また一つ、小さくため息が零れる。
それと同時に、チンッと甲高い食パンが焼ける音がした。
静かな部屋に、味気のない安い食パン。
耳すませば、微かに聞こえてくるスズメの声。
ちらっと壁にかけてある白い丸時計を見ると、時刻は午前6時を回っていた。
…また、嫌な一日が始まる。