そう思いつつも、しっかりと抱き締めた葵の腕は離さない。
だって気持ちいいんだもん。
この感触は一回でも味わっちゃうとハマっちゃって離せなくなる。
「誘ってねぇなら、この手は何なんだよ」
右眉を上げ、少し不機嫌そうな顔をする葵を無視して、ニカっと笑ってみせた。
この気持ちよさが葵には分かんないから、誘ってるとか勘違いしちゃうんだ。
この気持ちよささえ分かれば
この感触さえ味わえば
この心地よささえ知れば
冗談でも、あたしが“誘ってる”なんて勘違いしないはずなのに。
「ねぇ、知らないの?」
「は?」
「この抱き締めた感触を」
こいつ頭おかしいんじゃねぇの?
という目であたしを見下ろす葵。
だってそうじゃない。
少し筋肉質の腕を抱き締めると分かる気持ちよさ、感触、心地よさを知らないんだよ?
可哀想すぎる。
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