た、高林くん…。
私はその名前に肩がビクッとなる。
高林大翔(ヒロト)は何を隠そう、
私の好きな人ーー。
もう何年も片思いをしているけど、
話すことはおろか目を合わせることですら
無理なほど奥手な私。
も、もしかしたらこれで
距離を縮めることができるかもしれない。
そんな思いが頭をよぎった。
「どう? 由紀、行くでしょ?」
まるで私の考えが分かるかのように、
ニヤニヤしながら言う菜摘。
ど、どうしよう…。
恋に奥手な私にとっては、
最初で最後のチャンスかもしれない。
「う、分かった…。行くよ」
私が言うと、菜摘は嬉しそうに
「やったぁ!! 日時やメンバーが決まったらメールするからね!!」
と言った。
メンバー決まってなかったのか…。
まぁいいや。
高林くんが居れば私は嬉しいから。