「車は当然、お前が出してくれるんだろうな」
「別にお前のでもいいんだぞ?店のいい宣伝になるじゃないか」
将人は振り返って自分の愛車を眺める。
配達時に乗り回しているその車の側面には、大きく“和菓子のながた”の文字。
「どう考えても、早希が嫌がるだろ」
誰が見ても、年頃の女の子が喜ぶような車ではない。
「おれは好きだけどな!広いから落ち着くし、何より自分が運転しなくてもいいってのが最高だ」
大和の言い様に将人は呆れたようにため息をついた。
「運転するのが嫌いなら、ドライブ旅行なんて計画すんなよ」
「まあ、全ては気分の問題だ!」
大口を開けて楽しげに笑う大和を眺めて、将人は苦笑気味に頬を緩めた。
「この自由人め」
「何をもって自由とするかは、その人の心次第だぜ」
いい事を言っているようにも聞こえるが、大和の言葉だと思えば全く心に響かない。