それから数分後…先ほどの機嫌の悪さはどこへやら、バッチリ着替えを済ませた早希は足取りも軽くリビングに足を踏み入れた。
「なっ、なっ、な…!!?」
そこで目にしたのは、意味のない単語を発しながら絶句する兄と、煙草を蒸しながらニコニコ笑う母の姿だった。
「だからー悪い、ごめん、ホントすまんって言ってるじゃん?」
その口から溢れ出る言葉は本当に謝罪なのかと疑いたくなるほど、母には悪びれた様子がこれっぽっちもない。
そんな母を前に、大和が口を半開きにしてまだ意味のない単語を連呼し続けている。
「まあそう言うことだから!おっ、サッキーおはよう」
「おはよう…珍しいねお母さん、今日休み?」
「いんや、これから出勤!今日は遅番だからさ、何時も通り晩飯は二人で仲良くお願いね」
煙草を持つ手をフルフル振るもんだから、煙が辺りに充満して早希は顔をしかめる。
「タバコ、止めたんじゃなかったの?」
窓辺に駆け寄り、換気の為に全開にして自分も綺麗な空気をいっぱいに吸い込む。