「作ったのあたしだから、片付けはやっといてね、じゃあごちそうさま」
「作ったって、サー子はお湯沸かして温めただ…」
「何か文句あんの!!!」
早々と食器を手に立ち上がった早希は、大和の言葉に鬼の形相で振り返る。
フルフルと首を激しく左右に動かす大和からは、兄の威厳というものが微塵も感じられない。
そんな大和を横目に、早希はシンクに食器を置くとさっさとリビングを出て行く。
一瞬だけ振り返った視界の隅に、壁にかかったカレンダーを見ながら嬉しそうに微笑む大和の姿が写った。
「…まだ先の話なのに、テンション上げるのが早すぎるのよ…恥ずかしいヤツ」
ボソッと呟いて自分の部屋に向かう早希、けれど本人も気がつかないうちにその口角は微かに上へと持ち上がっていた。
内心では大和に負けず劣らずテンションが上がっているものの、それをおくびにも出さない早希は、至って平静を保ったまま部屋に入る。
真っ暗な室内で一番初めに目に付いたのは、ベッドの上で点滅する明り。
電気を付けることもなく、ベッドにダイブすると携帯を開いて受信されたメールを確認する。
メールは全部で三件、そのうち一件は広告メール、もう一件は母からの現状確認メールだった。