朝は悠陽のモゾモゾ動く手で起きた。



「朝から何…。」

「下履いてないし上の服俺んだし…。誘ってんでしょ…。」

「誘ってないよ…。」

「琉伊君の言ってた意味がわかったよ。これは萌え…。」



意味のわからない悠陽に朝から食べられた…。



朝からって…。



恥ずかしくて悠陽の顔がまともに見れないじゃん!!



「今日仕事?」

「うん。午後から学校行くよ。」

「そっか。じゃ、俺は学業に専念しときます。」



時間が合えば悠陽が朝にあたしを迎えに来てくれて一緒に行く。



でも今日はあたしが仕事だぁ~…。



夜はレジェに行って働くし!!



女子高生も忙しい。



午後からは授業に出るから制服を着て出勤。



ん~?



そう言えば昨日悠陽が言ってたアキさんはなんだったんだろ…。



でもたいした事ないんだろうな。



そう思ってたのに…。



「美羽は今日ナシになったから…。」

「意味がわかんない。あたしのページじゃん。」

「それ…。今回からアキに変更…。」



変更?



何も聞いてないし今日だよ!?



「何で変更なんですか!!」

「事務所からそう言われたから…。」



有り得ない…。



事務所!?



なんで事務所!?



「おはよう悠陽!!」

「は!?お前撮影なんじゃ…。」

「あたしのページがなくなったぁ~…。」

「………殺す。」



待ってよ!!



あたし意味わかんないよ!!



何であたしが降ろされなきゃいけないの!?



「アキの仕業だな。」

「どうして?」

「俺がお気に入りらしい。しかもアイツは社長の娘だ…。」



娘…。



なんなのソレ!?



断然あたしのが人気者だもん!!



許しちゃ置けない…。



悠陽は終始イライラしてて、話しかけられるような雰囲気じゃない…。



「何キレてんの悠陽。」

「聞いてよ莉里…。」



莉里に訳を話した。



莉里の顔が怖いんだけど…。



「あのヘナチョコ田上…。莉里がぶっ潰してやろうか…。」

「そんな事したら事務所にいられないよ!?」

「美羽チャン、莉里と悠陽を誰だと思ってるの?」



日本一の双子さん?



双子?



人妻と彼氏?



「ちょっと悠陽。莉里今ストレス溜まってるの。」

「だから何だよ。」

「派手に戦争しない?口実は美羽。」

「乗った。」



待って!?



あたしのせいで大事になるのはイヤ!!



しかも事務所クビになったらどうするの!?



「莉里はまだ社長の方には動かなくてイイから。俺がどうにかする。」

「わかった。悠陽は社長ね。あたしはアキチャンを可愛がっとく。」



恐ろしい二人…。



昔から一緒にいた莉里はあたしなんかよりも遥上にいる存在。



それはわかってたけどやっぱり凄い…。



無理矢理午後からつれて来られた莉里の撮影。



「おはようございますRiriさん。」

「おはよう。アキって今日いたよね?」

「いますよ?」



相手が年上でも堂々と呼び捨て…。



まずそこからしてあたしには出来ない…。



「おはようアッキー。」

「おはようございますRiriさん。」

「美羽のページがアキになったのはなぁんで?」

「えっ!?それは…。社長がした事です。」

「そ。パパの力がないと実力じゃ勝ち取れないかぁ~。可哀相なアキ。」

「は!?バカにしないでくださいよ。自分だってNeneさんの七光りのくせに。」



アアアア、アキさん…。



それを言ったら莉里がキレると思うんだけど…。



莉里ってプライド高いし…。



ほら…。



莉里の目付きがきつくなった…。



「七光り…。年下の莉里に敬語使っちゃってるくせにんな事言えんの?」

「一応先輩には変わりないですから。」

「じゃあ七光りじゃないとこ見せてあげるよ。ついでにあんたのモデル人生も絶ってあげてもいいよ?」

「そんな権力あなたにナイじゃない。」

「それはどうかね?まぁ見てなよチビチャン。」



莉里って凄い…。



やっぱりあたしには程遠い人なんだね…。



「ねぇ藤さん、アイツやる気あんのかな?」

「アキ?」

「うん。向いてなくない?ってか莉里と合わないから変えて?あの子の横じゃ笑えない。」

「Ririチャンがそんな事言うの珍しいな。誰に変える?」

「美羽。」



あたし!?



ってか莉里が仕事場でワガママ言うのを初めて聞いた…。



あたしのために…。



ごめんね莉里…。



それから莉里は何かとあたしを指名するようになった。



その半面、あたしの正規の仕事が減ってしまってて、その代わりにアキさんが出る…。



申し訳ない…。



「美羽、イイ仕事回しておいたから。」

「何?」

「アキと組むの。」

「あたしが!?」

「そう。文句あるなら聞いちゃって宣戦布告の一つくらいしてきなよ。」



あたしが先輩に盾突くの!?



あたしにそんな度胸…。



でも確かにアキさんはあたしに何も言ってこない。



影でコソコソって…。



「俺、事務所辞めるわ。」

「えっ…。なんで?」

「あのハゲ社長が美羽をクビにするとか言い出したから。」



待ってよ悠陽…。



あたしのせいで辞める?



「これからどうするの?」

「わかんね。あの社長、見かけによらず権力あるみたいでどこも拾ってくんねぇかもな。」



そしたら悠陽はモデルを辞める…。



悠陽がモデルを辞める!?



そんなの死んでもイヤ!!



【蒼斗】



せっかく帰ってきたのに…。



「蒼斗先輩~!!」



ウザイのが付きまとってる…。



ってか今俺の人気がまた上がってしまったらしく…。



モテまくり?



「おはようレナチャン…。」

「朝から先輩に会えると思ってなかったから超嬉しい~!!」

「そう…。」



こんな日に限って英梨は仕事だし…。



マジ最悪…。



朝から気分わりぃ…。



「蒼斗君だ!!」

「悠陽君もイイけどあたしは蒼斗君派~!!」

「会長より優しそうだもんね!!」



俺は優しくねぇよ。



英梨には優しくするけど。



後は偽物の俺だ。



「先輩人気者でちょっとショック…。」

「なんで…。」

「だってレナの先輩だもん!!」



おい…。



何だよその勘違い…。



まぁ中3の時にレナに告られはした。



でも確実に振ったはずだ。



腕組んだりすんなよ…。



マジで勘違われたら英梨が泣く…。



「レナチャン?俺は英梨だけしか好きじゃないよ?」

「だって先輩さぁ、昔言ったじゃん、『レナチャンは俺にはもったいない。俺がもっとイイ男にならなきゃ釣り合わないよ』って。」



だからそれで振っただろ…。



しかも傷付けないように柔らか過ぎるくらいに言ってやったのに…。



泣かれちゃ最悪だから…。



「先輩はもうイイ男でしょ?レナにピッタリだね!!」



はぁ!?



お前どんだけプラス思考なんだよ!!



しかもナルシスト…。



最悪…。



「それは昔の話しで…。」

「だからレナはこの学園に来たんだよ?」



マジで辞めてくれ…。



ウルウルすんじゃねぇよ…。



マジでどうしたらいいのかわかんねぇだろ…。



「でも俺は今英梨と付き合ってて、英梨が好きなんだよ。」

「別れたらイイじゃん。」



わかわかわか、別れる!?



あの辛い辛い遠距離を乗り越えた俺と英梨に別れろと!?



本気でバカだな…。



あの中学頭よかったハズなのに…。



「俺は英梨と別れないよ。」

「じゃあレナは?」



知るかよ…。



勝手に追い掛けてきたんだろうが…。



「他の人探したら?」

「ヤダ!!先輩じゃなきゃイヤだもん!!」



そう言って走って行ったレナ…。



マジでどうすりゃいいんだよ…。



「モテますな。」

「裕介さん…。」

「カワイイなあの子。」

「顔だけ。マジうぜぇよ…。勘違いも程々にしとけって感じ…。」

「勘違いさせたお前も悪いんじゃね?」



俺が!?



でも傷つけないようにしただけで…。



しかも俺にも体裁ってもんがあるし…。



「どうすりゃいいかな…。」

「バッサリ切り捨てろ。相手にとってもそれが1番。」



わかった。