【美羽】
超会いたい…。
悠陽に会いたいよ~…。
「くぉら!!さっきから呼んでんだろうが!!」
「何!?ごめん!!」
「62ページの問5。答えは?」
「やってない…。」
「お前抜け過ぎ。後で俺んとこ来い。」
最悪…。
悠陽のことばっかり考え過ぎてて中先に怒られた…。
絶対何かさせられるんだ…。
掃除とか掃除とか掃除とか…。
もうイヤ~…。
悠陽はあんまり連絡をくれない。
疲れてたっぽいのはわかるけど。
でももう少し声が聞きたいよぉ~…。
「失礼します。」
「おぅ、まぁ座れや。」
初めて呼び出された中先のVipルーム…。
奥さんの写真が堂々と飾ってある…。
愛妻家なんだね…。
「何よ…。」
「何じゃねぇよ…。天道がいないだけで抜け殻状態だな…。」
だって寂しさMAXなんだもん…。
たかが1ヶ月がこんなに寂しいとは思わなかったもん…。
「もうすぐ帰ってくんだろ?」
「うん…。でも待てない…。」
「桜井なんて堂々とサボって会いに行きやがったからな…。」
「羨ましい行動力…。あたしも会いに行きたい。」
「それは教師的に見過ごせないな。」
「それ以前に心配性のパパリンが行かせてくれないもん…。」
「あのカッコイイ親父か。」
「そうそう。悠陽のがカッコイイけどね。」
悠陽の話ししてたら余計悠陽に会いたくなってきた…。
バカ中先…。
「それより何であいつあんなに頭いいんだ?」
「悠陽は努力家なんだよ。生れつき頭イイとか言ってても影で努力してるんだよ?」
「あいつが努力家!?」
「うん。今もきっと勉強してると思うよ。S大行くって言ってたから。」
「へぇ~…。以外な一面。」
「悠陽は欲張りなんだもん。」
地位も名誉も実力も運も全部欲しい人なんだ。
そんな悠陽が好きなんだけどね。
誰にも負けないで走り続けようとする悠陽が大好き。
「お前の進路はこの前のままか?」
「うん。卒業したら大学通うよ。S大は無理だし自立したいから…。モデルだっていつかは辞めちゃうしね。」
あたしは卒業したら短大に行くんだもん。
悠陽にばっかり頼りたくないし。
あたし、幼稚園の先生になりたい。
まだ悠陽には言えてないけど…。
でもきっと賛成してくれる。
「すげぇよなぁ~お前ら。」
「何が?」
「俺が16の時なんて全く夢なんてなかったのに。適当に教師になったらただハマっただけで。」
「そうなんだ。で?あたしはどうすればいいの?」
「窓拭き。」
悠陽君、あたしは今日窓拭きをしました。
あなたは今何をしてますか?
死ぬほど会いたいです…。
なんて手紙書いちゃう勢いだよ!!
家に帰っても暗いあたし…。
何もする気になれないや…。
「美羽、バイトしない?」
「レジェで?」
「うん。最近社内恋愛の二人が出来ちゃった結婚で辞めちゃって人手不足なの。」
「しようかな…。」
「そうと決まれば行くよ!!」
「今日!?」
「うん!!」
ママリンに連れてこられたレジェはやっぱり本店。
池内君だ…。
「美羽が今日から働くからヨロシク。」
「「了解で~す。」」
「じゃ、ケンジでいいか。美羽の指導係。」
ママリンって偉いんだね…。
家と全然違う…。
「じゃこれに着替えてね。」
「うん。」
更衣室で着替えたあたしは鏡で自分チェック。
制服カワイイ…。
「ミューミュー似合うじゃん!!」
「ちょっと恥ずかしいけどね…。」
同僚は殆ど顔見知りか先輩モデル。
働きやすいよね。
一応昔からママリンの姿は見てたし!!
頑張ろ…。
「美羽、まず一通り教えるね。」
「うん。」
「基本、美羽の仕事はフロアで接客、配膳と溜まった皿洗い。」
「うん。」
「じゃ、20分でメニュー覚えて。」
メニューはだいたいわかるもん。
通ってるからね。
「覚えた~。」
「じゃ、いらっしゃいませの練習。」
「それは実践で…。」
「ダメ~。」
悠陽君、今日は窓拭きといらっしゃいませをしたよ。
夜のレジェはやっぱり素敵でした。
「美羽、3番にコレ運んで!!」
「はぁい。」
結構楽しい。
でも悠陽と一緒にやりたかったな…。
「いらっしゃいま…。」
「美羽!?」
「蓮チャンだ。いらっしゃい。」
「お前今日から?」
「うん。似合うでしょ?」
「まぁまぁだな。」
「じゃ、こちらへどうぞ~。」
知ってる人が来るのって不思議な気分だ。
でもなんか嬉しい。
レジェって平日なのにこんなに人が来るのかって程に混む。
忙しいと時間がたつのが早いね。
「お疲れ様でした。」
「お疲れ~。」
「柊太君っていつもこんなのやってるの?」
「まぁな。でも楽しいだろ!!口出すだけのオーナーさんにはわからない快感だな。」
「ヒナ君?」
「そうそう。あいつもたまには店出ろって感じ。」
「忙しいから仕方ないじゃん。」
「だけど~。いつまで俺は代理なわけ?」
愚痴ってる…。
でも柊太君は2番目に偉いんだよ?
十分じゃない?
「さて、子供は帰る時間。校則破ったら華衣チャンに俺が怒られるから帰りなさい。」
「はぁい。またヨロシクです。」
「あいよ~。」
柊太君も年取るごとにイイ男になるね~…。
ワイルドヒナ君って感じ。
悠陽はどんな風になるんだろう…。
初バイトはやっぱり疲れるもので…。
家に帰ったらもうヘトヘトです…。
お風呂からあがってから鳴った携帯。
「悠陽~!!」
「テンション高っ!!」
「だって悠陽電話くれないんだもん…。」
「ごめんな?こっちもそれなりに忙しいんだよ…。」
「わかってるもん…。あっ!!今日からレジェでバイト始めたよ。」
「マジ!?俺に相談ナシ!?」
「だって悠陽が連絡くれないんじゃん…。」
って言っても急遽決まったバイトなんだけどね…。
でも怒られる筋合いはない。
「せめて俺が帰るまで待ってろよなぁ~…。」
「そんなの悠陽の都合じゃん。」
「だけど心配だろ~…。」
「全然心配いりませんから。」
「何なのそれ…。」
「悠陽ばっかり好きなことしてるじゃん!!あたしだって自分で好きにするもん!!もう寝る。バイバイ。」
「美羽!?ちょっ…。」
悠陽なんて知らない…。
【悠陽】
ムカつくムカつく…。
美羽が電話に出ない。
「莉里、美羽と連絡取ったか?」
「取ってないよ。隼人ともあんまり取れないのに美羽と取れるわけないじゃん。」
だよな…。
メールもシカトだし。
そんなに怒んなよ!!
俺と美羽って結構ケンカする方だとは思う。
でも言い争って終わりって感じでここまで酷いのは初めてだ…。
もうすぐ帰れんのに…。
俺だって我慢してるっつーの!!
「悠陽、顔怖い…。」
「あっ…。すいません…。」
「でも怒った感じもイイね。威嚇してみてよ。」
「お安い御用で。」
今の俺の気持ちのまんまじゃね?
でもマジでイライラが…。
「莉里、携帯貸せ。」
「誰に電話?」
「ミュー。」
「はいどうぞ。」
俺からで出ないなら莉里のからでかけるしかねぇよな…。
そして繋がった電話…。
「莉里!?」
「ちげぇよ俺。」
「悠陽か…。今は話したくない。じゃあね。」
「は!?なんなのこの前から!?マジムカつくんだけど。」
「あたしだってムカつくよ!!バカ悠!!」
そう言って切られた電話…。
マジねぇ!!
「あっ!!」
「いやぁぁぁぁ!!莉里の携帯~!!」
「ご、ごめん…。」
「ごめんじゃないよ!!何で折るの!?信じらんない!!悠陽が壊したぁ~!!」
ごめん莉里…。
無意識にやってしまった…。
「泣くなよ!!日本に戻ったら新しいの買うから!!な!?」
「隼人と電話出来ない~…。悠陽嫌い~…。もう莉里帰る~!!」
「ごめんって!!俺の!!俺の貸すから!!使い放題使ってイイっス!!隼人さんの番号…これ!!」
「うわぁぁぁぁん!!バカ悠~!!通話代覚悟しときな!!」
マジ最悪…。