【悠陽】
寧音の体調はよくなった。
でも子供はまだわからないらしい…。
入院してから3週間…。
前程責任を感じなくなったけど、アメリカ行きで揉めた事は俺達が間違ってた。
1週間後には学祭があって…。
今の楽しみは美羽にコスプレさせる事だ。
「絶対着ない!!悠陽の前でメイドとか超ムリ!!」
「コスって言ったらメイドだろ!!」
「ヤダヤダヤダ!!」
俺の楽しみを奪うつもりか!?
こうなったらコス先輩に相談。
「琉伊君は何が1番萌える!?」
「俺の服。」
「服!?」
「たまにサクに着せんだよ。Yシャツとかトレーナーとか。マジやべぇ!!」
それはプレイが始まる前では?
娘の彼氏に吹き込むな…。
しかも今自粛中なのに…。
3月まで我慢するって決めたのに!!
でも1回約束破ったけど…。
まぁそれは内緒で。
「隼人さんはドクターなんだって。」
「お前は?」
「決めてねぇ。」
「おめぇは全身タイツでも着て美羽に幻滅されちまえ。」
バカか…。
ってかマジで自分の事考えてなかったな…。
その日のうちに美羽に相談した。
ってか俺、半同棲どころか週1も自分ちに帰ってねぇ。
「美羽、俺何着ればイイ?」
「スーツ!!スーツゥ~!!」
「美羽ってスーツ好きなのか?」
「好き!!でも見れないようなのも見たい…。ガテン系とか?」
ニッカ履いてタオル被れと?
ムリだ。
「却下。」
「じゃあサラリーマン。メガネかけてね?」
「美羽は浴衣でいいや。萌えるから。」
「でもしない約束だよ?」
わかってるっつーの…。
毎日が拷問…。
そして学祭前の三者面談。
「はじめまして。息子がいつもお世話になってます。」
「いえいえ、本当に悠陽君は生意気なクソガキですね。」
「ハッキリ言いますね先生…。まぁ家でもそんな感じです。でも私に似て頭と顔だけはいいんですよ。」
けなしまくってねぇか?
寧音が来るよりマシかもな…。
しかも日向のが年上なのに遥かに下に見える。
「そうですね、成績は生意気なくせに学年2位です。」
「1位は?」
「お宅の娘さんですよ。」
「なるほど。生活態度はどうでしょう?」
「口答えしかしないですね~。でも仕事にも将来にも真っすぐでイイと思いますよ?」
褒めた…。
明日は確実に雨だな。
「天道は何大目指してんだ?」
「S大の経済学部。」
「本気か!?この学園からS大は前例が…。」
「俺が受かんねぇわけねぇだろ。」
「俺じゃ教えられない域だから塾でも通った方が身の為だ。」
自力でやるし。
まぁ俺はやれば出来る。
「大和君!!俺も一緒に面談しちゃってよ!!時間ないんだ!!」
「まぁいいか。お前どうせ卒業出来るし。座れ。」
「ありがと!!桜井隼人です。将来の夢は莉里と結婚して日向さん達の老後の面倒見ることです!!」
「聞いてねぇし自己紹介してんなよ…。」
「以上!!もうイイ!?俺仕事行くね!?」
「はいはい…。」
俺ももういいかな…。
話す事ねぇだろ…。
「桜井は天道さんちに住んでるんですか?」
「あぁ、住んでますよ。悠陽は美羽の家から帰ってきませんし。本人の事は本人で決めるそうですから。もう干渉しないんです。一回地獄に落ちやがれって感じですかね?」
まだ怒ってんのかよ…。
アメリカ行き決めた事…。
「私も同感です。」
「気が合いますね先生。」
「そうですねお父さん。」
何回も謝っただろ~…。
日向も結構ガキだな…。
「大人げねぇぞ日向。」
「ガキのくせに勝手に決めんなよ。」
「自分で仕事選んでんのなんて中学ん時からだろ。キレられても今更だし。」
「海外くらい相談してもいいんじゃねぇの!?写真集の時は頭下げたくせに。」
「じゃあ言わせてもらうけど。日向さん、自分だって好き勝手やってたじゃないですか。」
「何だそれ。バカにしてんのか?」
「してるっつーの!!何回話し合ったんだよ!!」
「おめぇうるせぇ。勝手にしろクソ息子。」
あぁムカつく!!
寧音より頭わりぃんじゃねぇの!?
「ケンカすんなよ…。たまにいるんですよね~面談中のケンカ。」
「すいませんね先生。そろそろ時間ですよね?娘のとこに行きます。」
「えぇ、本日はお忙しい中ありがとうございました。」
「いえ、これからもよろしくお願いします。なんなら根性叩き直してやってください。」
マジムカつく…。
でもこの状況で家に帰ってない俺も悪い。
だけどこんな調子なら家帰ってもケンカだよな!?
久しぶりに寧音んとこ行こう…。
病院の前で5分程悩んでから中に入った。
「寧音~。」
「ヒナ?って悠陽か。珍し~。日向の声かと思った。」
「似てねぇだろ。」
「似てるよ。顔も声も身長も。やっぱり親子だね。」
「なぁ寧音、日向と話すとケンカになんだけど…。」
「アメリカの事?」
「そ。」
反対してくるわけじゃねぇのに何であんなに突っ掛かってくんだよ…。
マジ意味わかんねぇ。
「寂しいんじゃない?今はあたしもこんなだし、莉里も悠陽もいなかったら。日向一人になった気分になるんじゃない?」
「ん~…。わかんねぇ…。」
「あたしの事もあるから今苛立ってると思う。日向って結構メンタル弱いから。子供だね~…。悠陽に八つ当たりなんて。」
八つ当たり…。
八つ当たりとか…。
息子にすんなよ!!
「心配なんだよ。海外に行くあんた達が。」
「それはわからんでもないけど…。」
「仕事行って家事やって休憩で毎日病院来て…。ヒナが倒れたらどうしよ。」
「まさか…。」
「そしたら隣にベッド運んでもらって仲良く入院しよ~。」
日向の疲れた顔とか見た事ねぇし。
仕事でも蓮チャンと違ってやさしいし…。
でもあのハードワークと病院通いはやっぱり辛いかも…。
「寧音、俺帰る。早くよくなれよ?」
「それはチビ達に言って~…。」
「また来る。じゃあな。」
今日は家帰ろう…。
日向にもう一回謝ろう…。
そう思って家に帰った。
予想外に早い帰宅の日向…。
気まずい…。
「珍しく帰って来たのかよ。赤沢君になったんじゃねぇの?」
「いちゃ悪いか?」
「別に。」
素っ気ねぇな…。
謝るタイミングがわかんねぇから取り合えず風呂に入った。
あがって牛乳飲んで…。
「日向…。」
「………。」
「日向!!」
「……………。」
「シカトすんじゃ…。」
寝てる…。
ソファで座りながら寝てる日向はクマが出来てる…。
寧音の言う通りだったかも…。
「日向~。お前俺の車にあった…」
「蓮チャン、日向寝てる。」
「悠陽がいんの珍しいな。」
「ははっ…。なんか俺ってガキだよね。」
「ガキって歳だから仕方ねぇだろ。」
「そうだけど…。日向疲れてんのかな…。」
「そりゃあ疲れてんだろ。日向のスケジュールで俺がやったら既に死んでる。それに寧音の事もあるしな。」
それほどなのか…。
世話のやける親父。
部屋から持って来た毛布をかけてやった。
「ただい…」
「日向寝てるから静かにしてやって。」
「悠陽頭打ったの?」
「打ってねぇよ。」
たまには日向を労ったっていいだろ…。
次の日起きると昨日日向にかけたハズの毛布が俺にかかってた。
リビングに出て牛乳を…。
「ありがとな悠陽。」
「何が…。」
「布団かけてくれたのお前だろ?」
「ちげぇよ。莉里。」
何かクソ恥ずかしい…。
ってか昨日と態度ちげぇから調子狂う…。
「悠、何か…。悪かったな。ちゃんとわかってんだけど…。まだ幼稚園児気分っつーか…。」
「ひでぇなそれ…。」
「あっち行っても莉里と仲良くな?」
「おぅ…。俺こそ…マジごめん。」
「早く準備した方が身のためだぞ。蓮司がもう現場行ってる。」
「ウソ!?やべぇ!!」
「待っててやるから早く準備して来い。俺のに乗ってけ。」
マジごめん…。
あんまり悩ませないようにするからな…。
俺、日向みてぇな親父になりたい。
「寧音に触りてぇ~!!」
「息子の前で言うな!!」
何気に尊敬してるからな。