美羽は仕事に行っていないし…。
超ヒマ。
「中先~腹減った~…。」
「今日仕事じゃねぇんだっけ?」
「休み~。」
「じゃあこの問題解けたら嫁特製サンドウィッチ食わせてやるよ。」
「マジ!?」
この問題?
アホ難しいじゃねぇかクソ担任…。
「出来た。」
「ぬぁ!?」
「はい、俺の勝ち。」
「バカっぽいくせに…。これ高3の後半の問題だぞ…。」
「そんなん中学ん時にやったし。」
「チッ…。」
俺って天才だな。
昼メシ確保。
「悠先輩~!!一緒にお昼行こ!!」
「行かねぇ。マジうぜぇ。」
「前は頻繁に呼び出してたくせに~。」
そりゃあその顔とあの身体なら普通の女よりは数段イイし。
まぁ美羽のが1番だけどな。
「悠先輩に仕込まれた技はパワーアップしたけど?」
「丁重にお断りさせていただきま~す。じゃあな。」
お前よりメシのが大事だ。
そして俺は今日も美羽の家に行く。
最近美羽の部屋に増えた俺の衣類達。
「美羽まだなの?」
「まだ。長引いてんのか何なのか…。」
「俺迎えに行くわ。」
メールを入れてから赤沢家を出た。
遅い!!
夜は心配っス…。
美羽からの返事はなかったから普通に撮影現場に来てみた。
「先輩!?」
「のの…。美羽は?」
「知らな~い。カメラマンさんと親しげだったけど~。浮気だね!!」
カメラマン?
なんだよ…。
「疾風君、美羽知らん?」
「おぉ悠陽!!美羽なら着替え中。」
なら待ってよ。
野々村さん、見すぎ。
「優しいね~先輩。」
「大事な美羽ちんに何かあったら困んだろ。」
「あたしには平気でなんでもさせたくせに~。」
「何でもって…。」
まぁさせたかもしんねぇけど…。
昔の話しだろ…。
「学校のトイレと~、体育館倉庫と屋上と…。」
「うるせぇよマジで。」
「でも1番忘れられないのは体育祭の時のグランドかな!!」
美羽に聞かれたらどうすん…。
あわわわわわわわ…。
「お迎え来てくれたの!?」
「まぁ…。」
「じゃあ帰ろう!!手繋いで帰って一緒にお風呂入って一緒に寝る…。」
「ん…。」
涙目…。
ぜってぇ聞こえたよな…。
帰り道は気まずいのなんのって…。
「美羽?怒ってんの?」
「怒ってるよ…。体育祭って何なのマジで…。」
「ごめん…。」
「あたし悠陽と生徒会室以外でした事ないもん!!」
「それは美羽を大事にしてるからで…。美羽の身体とか誰にも見られたくねぇし…。」
「あの子イヤ!!」
わかってます…。
でもあれはただの遊びで…。
ごめんなさい…。
今日の美羽は家に帰っても不機嫌のようです…。
困ったな…。
「さっき美羽の好きなアイス買ってきたんだけど…。」
「いらない…。」
「はい…。」
くっつけない…。
もうヤダ!!
「琉伊君、俺約束守れねぇかも…。」
「別にイイぞ。そのかわり半年出禁だからな。」
それでイイや…。
だって今は美羽を安心させてやりてぇんだもん…。
「悠!?する気!?」
「する気。半年出入り禁止になるけど…。」
「ヤダ…。」
「でも美羽が1番だってわかってもらいてぇし。」
バカ正直に琉伊君に話す問題でもねぇだろ。
久しぶりの美羽の肌だ…。
「悠陽の電話っ…。鳴ってる…。」
「ののかよ…。」
「切って?」
「あいよ。」
切らねぇで繋いでやれ。
お前と美羽は違うんだっつーの。
「悠っ…。」
「マジカワイイ。すげぇ好きだよ美羽。」
「うんっ…。」
「美羽に入りてぇんだけど。」
「早く…して?」
ぬぁぁぁぁぁ…。
ののに聞かれてる声と久しぶりの美羽にマジヤバイ…。
「ズットそばにいてな?」
「んっ…。悠も…どこにも行っちゃやぁっ…。」
「行かないから。美羽だけ。」
そんな言葉をたくさん言った気がした。
終わると待ち受けに戻ってる携帯。
通話時間1分半…。
まぁかなりイイとこ聞かれたな。
「間違って通話押してたらしい。」
「えぇぇぇ!?ウソでしょ!?」
「マジ。めっちゃ恥ずかしいな!!」
「楽しそうだね…。」
これでわかっただろ。
お前と美羽の差。
「でも悠陽凄いよかった…。」
「ははっ…。」
照れっから言うな…。
まぁ久しぶりに気分は盛り上がったけどな…。
次の日は琉伊君にウソをついてから学校に行った。
美羽と手繋いで。
「先輩!!何アレ!?」
「何が?」
「当て付け!?」
だな。
バカでも気づくだろ。
「聞かれちゃったら仕方ないよね~悠陽。」
「仕方ねぇなぁ。」
「昨日は最高だったけど。悠陽超優しかったし。」
美羽が勝ち気だ…。
ヤキモチのおかげか…。
「美羽先輩だってそのうち悠先輩に捨てられるもん!!」
「捨てねぇよバカ。」
「もうイイ!!悠先輩大嫌い!!」
解決解決。
じゃあ俺は授業受けて仕事に…。
「悠陽、生徒会室行こう?」
「マジ?」
「うん…。」
美羽ちんどうした!?
でもたまには嬉しい…。
「あぁん…。やっ…。」
「もっと動けよ。」
「やぁん…。そこダメっ…。」
悟さん!?
またかよ!?
取り合えず美羽の目をふさいどこ。
「2日続けて邪魔すんなよ悠陽…。」
「せめてカギかけろよ!!」
「スリルだろスリル。」
美羽は大切にしよう。
だからあと半年は我慢することにします…。
【英梨】
寮に来てから1週間以上経った。
物が少なくて寂しい部屋だったのに今は寂しくない。
「英梨チャン、ご飯出来たよ!!」
「やった!!樹奈さん見かけによらず料理上手!!」
「見かけによらずはいらないし!!」
「あははっ!!いただきます!!」
友達になった樹奈さんが頻繁に遊びに来てくれるから。
だから寂しくない。
樹奈さんは蒼君との事を一切聞いて来ない。
あたしの雰囲気から何か悟ってくれてるのかも…。
「そういえば樹奈さんは彼氏いるの?」
「何!?急に…。」
「だってそんなに美人なら男がほっとかないかなぁ?って。」
「いるよ。いるけど…。不倫なんだあたし。」
不倫!?
不倫ってあれだよね!?
妻がいて…。
それでも付き合う?
樹奈さんが!?
「その人子供もいるんだよね。」
「こ、子供…。」
樹奈さんは愛人って事?
妻子持ちの人…。
「雑誌関係の仕事してる人でね、あたしがしてる仕事の担当で…。だからあたしもこの仕事してる~みたいな感じかな…。」
「そうだったんだ…。」
「まぁこの前は偉そうな事言ったけどね!!でも実際不純な動悸で仕事してる…。」
何もないような樹奈さんの明るさの裏にはそんな事があったんだ…。
人は本当に見かけによらない…。
「英梨チャンは?何かあるんでしょ?」
「うん…。今冷却期間。」
「遠距離だから?」
「お互いいろいろあって…。蒼君は浮気するしあたしの気持ちはフラフラするし…。もうダメなのかな…。」
「そっか。でも好きなんでしょ?」
「好き…だよ。蒼君もあたしを好きでいてくれてるって信じてる…。」
「じゃあ大丈夫だよ!!」
そうかな…。
蒼君、浮気してないかな…。
ご飯ちゃんと食べてるかな…。
ちゃんと寝てるかな…。
心配がいっぱい…。
蒼君の気持ちもわからなくて何してるのかもわからない…。
寂しいな…。
寧音さんに渡してもらった新しい携帯にもまだ1回も着信はない…。
「さ、食べよう!!」
「うん!!」
樹奈さんが元気をくれる…。
蒼君、あたし、友達出来たんだよ。
日本に帰って来たら紹介するからね?
「で!?そのフラついた相手って誰!?」
「洋平君…。」
「なっ!?共演者!?」
「そうです…。」
「危険だね。今1番近くにいる。」
わかってる…。
蒼君より近くにいる洋平君…。
でもあたしの気持ちは蒼君にあるもん。
もう揺らいじゃダメ。
その時なったインターフォン。
「悠陽君と美羽チャン!?」
「「お邪魔しまぁす!!」」
樹奈さん以外の訪問者だ…。
嬉しいし、まだ少ししか離れてないのに悠陽君が懐かしい。