その後は酔ってる隼人のわけのわからない話し三昧…。



「明後日からのライブ着ぐるみ着たいなぁ~。」

「き、着たら?」

「でも怒られるじゃん?」

「誰に…。」

「増岡さん。」

「誰だか知らないけど怒られんじゃないかな…。」

「だよね~…。」



さっきからその話し10回くらい聞いてるんですけど…。



ぶっちゃけ超クドい。



どんだけ着ぐるみ着たいんだっつーの…。



「寧音さぁん、俺莉里と結婚したぁい。」

「別にいいんじゃない?ヒナ落とすなら今だよ?」

「マジィ!?落としてくる!!」



結婚って先の話しでしょ!?



莉里はまだ何も考えてないよ!?



「お父さん、莉里さんを今すぐください!!」

「いいっスよ。もらってやってくださいな。」



ヒナ君超酔ってる~…。



皆暴走し過ぎ!!



琉伊君は美羽が心配過ぎてやけ酒!?



でも本当に莉里は結婚するの!?



「じゃあ契約書にサインを!!」

「あいよ。」



婚姻届け!?



保護者の同意書!?



何でそんなの持ってるの隼人!!



「やった!!結婚しよう莉里!!」

「ま、待って?」

「なんで?」

「ヒナ君酔ってるし隼人も酔ってるし…。莉里…。」

「酔ってなくても気持ちはかわらないけど?」

「莉里まだ結婚しな~い!!」

「えぇぇぇぇ!?」



だってまだ16だし…。



人妻とか…。



「まだしないもん!!」

「莉里は俺が嫌いなんだぁぁぁぁ…。さっきクワガタくっつけたからだ…。」

「違う!!まだやりたい事いっぱいあるし…。まだ夢とか見つかってないし…。まだ早い…。」

「そっか。わかった。」



ショック受けちゃったかな…。



何か悪い事したかも…。



「莉里がプロポーズしてくれんの待ってるね!!」



隼人…。



そしてニコッと笑った隼人に笑顔を返した。



「でも早めにしてね?」

「できるだけね?」



隼人は本物の家族に憧れてるってのは知ってる。



でも今結婚しちゃったらいつか莉里に夢が出来た時にすれ違ってしまうような気がする…。



それが隼人と結婚してしまったら叶わないような…。



そんな気がするから今は結婚できない。



「莉里が幸せにしてあげるね!!」

「うん!!」

「だからズット一緒だよ!!」

「俺が莉里から離れないもん。」

「莉里も離れない!!」



やっぱり隼人が好き。



だってこんなに純粋に愛してくれる人ってあんまりいないでしょ?



素直だし暖かいし。



だから隼人が大好き!!



「俺は認めねぇからな。」

「恭一君!?」

「悠陽に美羽はやんねぇ!!琉伊がイイって言っても俺が許さん!!」



莉里と隼人って…。



超幸せじゃない!?



来年も隼人と来れますように!!



【蒼斗】



英梨が日本に帰ってからも俺は仕事。



仕事しかしてない。



他にやる事がなくて…。



他の事が手につかないって感じかも…。



「順調過ぎて怖いな蒼斗…。」

「そう?まぁ今はこれしか出来ないし…。」

「別れたのか?」

「別れ…てないと俺は思ってる。」



英梨は今何してて誰といる?



俺達…。



別れてねぇよな?



「蒼、社長から電話。」

「ヒロから?」



日本から来る電話はなぜかドキッとする。



英梨から来ない事はわかってても…。



なぜかドキドキする…。



「はい。」

「あ、蒼斗…。お前ら何かあったのか?」

「知ってんの?なんで?」

「英梨が事務所の寮に住みたいって言ってきた。」



寮…。



もう俺の部屋には帰らないって事…。



心臓痛い…。



「距離置いてる状態。」

「そうか…。」



寮ねぇ…。



もしかして…。



「洋平って寮?」

「橘洋平か?」

「何洋平か知らねぇよ。英梨と共演してる奴。」

「確か…。寮だな。上京組だから。」



そう言うわけか…。



既に敗北?



キツいな…。



「ヒロ、もう英梨情報を俺に流すな…。」

「でも…。」

「日本に戻りたくなるからやめろ…。」

「………わかった。」



英梨が家を出る…。



そして洋平のいる寮に住む…。



ムカつく…。



でも俺は英梨と約束したから…。



絶対気持ちは変わらないって。



あいつも待ってるって言ったよな?



俺はその言葉を信じたい。



「蒼斗、出番。」

「あいよ。ガンガン撃ち殺してくるわ。」

「スタントなしだと結構危険っぽいからケガすんなよ?」

「任せろ達也。」



俺は今出来る事をしなきゃいけない。



英梨がもし俺を好きでいたらきっとそれを望んでくれてると思うから。



それでもやっぱりキツいもんはキツい。



「蒼、大丈夫?」

「まぁ大丈夫ではねぇな…。胃が痛い。」

「ムリし過ぎ…。最近のあんた見てるとあたしまで痛いよ…。」

「ごめんな彩香チャン…。」



でも時間は待ってくれないし…。



俺は先に進まなきゃいけない。



早く時間が流れればイイ…。



「蒼斗!!」

「蓮さん!?」

「仕事でこっち来たから寄ってみた。」



ウソだな…。



蓮さんの事だから俺が心配だったんだろ?



「メシ食いにいかねぇ?」

「イイよ…。」



英梨の話しすんのかな…。



まぁ何も言ってなかった俺が悪いか…。



「蓮さんじゃん!!」

「久しぶりだな涼司。」

「俺も旅行行きたかった~…。」

「冬も行くかもしんねぇけど?あ、終わんねぇか。」

「受けなきゃよかったこの話し。」



旅行のために仕事放棄かよ…。



でも俺もこの話しを受けなければ今年も英梨と旅行行けたんだよな…。



「行くぞ蒼斗。」

「メシ!?俺も行きてぇ!!」

「ダメ。久しぶりに親子で語り合うから。明日ならイイぞ。」

「じゃあ明日!!」



やっぱり英梨の事か…。



英梨は蓮さんに何て言ったんだろう…。



『別れた』?



やっぱり聞きたくねぇな…。



それから蓮さんは俺を高そうな店に連れて来てくれた。



「理由がよくわからねぇ。」

「英梨の事?」

「あぁ。『あたしが悪いから。』『ここにいちゃいけない気がする。』それしか言わねぇ…。」

「今…。距離置いてるんだ。別れたって思ってるかもしれないけど…。」

「だからなんでだよ…。」

「俺が浮気したから。」

「は!?マジか!?」

「酔った勢いでちょこっとな…。」

「バカ…。」



やっぱりあれは未遂じゃなくて浮気だと思う。



逆の立場だったら英梨が途中までとかもイヤだ…。



「じゃあ英梨はなんで自分を攻める?」

「それは…。まぁ二人の間の問題で…。」

「よくわかんねぇけど…。あんまり荷物は運ばないみたいだから。戻る気はあるんだろうな。」



そうなのか…。



着たいして…。



いいのか?



「俺が口出す問題でもねぇけど…。でも好きなら離すなよ?」

「それはわかんねぇ…。俺は英梨と連絡取らないから。アイツが何しても俺は英梨を信じてるし好きでいる。」

「ふぅん…。まぁ…頑張れ。」

「来てくれてありがと蓮さん…。」



やっぱり顔見たらホッとした。



悠陽とか莉里とか…。



ヒナ兄達は元気かな…。



帰りてぇ…。



「俺行くから。」

「もう!?」

「蓮さん見てるとホームシックになる。」

「ははっ!!じゃあまたな?頑張れよ?」

「マジ…ありがと…。」



頑張る。



頑張らなきゃ…。



寝ても覚めても心の曇りは取れない…。



「蒼斗!!今日家来いよ!!」

「行かね。ダメダメ…。」

「いいから終わったら連れて帰るからな!!」



達也の家行ったら思い出すだろ…。



クレアの事…。



まぁあれからもクレアとの接点はないわけじゃないけど…。



でもあんまり会いたくねぇし…。



英梨に申し訳なく思う…。



「行くぞ蒼斗!!」

「行かねぇって!!」

「たまには俺にイイ事させろよ…。」



達也のイイ事はイイ事じゃなさそうだろ…。



でも何だかその気持ちが嬉しくて…。



また達也の家に来てしまった。



「蒼斗!!こっち!!」

「電気付け…。」



何で!?



何これ!?



「ハッピバースディ蒼斗!!」

「えっ!?俺…。誕生日!?」



そう言われればいつの間にか9月。



俺、17歳か…。



目の前にある特大ケーキと撮影に関わった人達。



監督と涼司君…。