【蒼斗】



仕事が終わって家に帰ったら勉強してるヒナ兄と英梨…。



なぜ勉強?



「おい!!英梨ってマジバカだな!!」

「バカだけど何でヒナ兄が勉強なんて教えてんだよ。」

「テスト落としたら仕事出来ねぇからって泣きついてきた。」



あ、そう言えばそろそろ夏休み前のテストだ。



そろそろって言ってもまだまだ先だけど。



まだ6月だし。



ってか今日って双子の誕生日じゃね!?



「あいつらの誕生日じゃねぇか?」

「そうだな。悠陽がもう祝う歳じゃねぇから何もすんなってさ~。」

「毎年盛大にパーティしてればそう思うだろ…。」



双子と美羽の誕生日が同じだからいつも3人一緒に祝ってた。



レジェ貸し切りで。



「悠陽は美羽とやらしい事してぇだけだろうな。」

「莉里は?」

「莉里は寧音と買い物行った。そのまま隼人とどっか行くとさ~…。」

「完璧にヒナ離れしたな。」

「マジ寂しい…。隼人に取られた…。」



可哀相なヒナ兄…。



でも家に住んでるだけマシだろ。



そのうち莉里もアメリカ行くだろうし。



「じゃあ今日は何もないんだな?」

「何もナシ。」

「じゃあ勉強頑張れよ~。」

「は!?お前が教えろよ!!」

「ヒナ兄が教えてやれよ。俺はマッサージチェアに座ってくっから。」



今から勉強は大変だな。



でも今からやらなきゃついて行けねぇだろうな~。



隼人さんもやべぇだろ。



ん!?



『無条件に卒業』



そうか…。



宝探したんだっけな…。



俺も探してやればよかった。



あのバカの為に。



「蒼斗!!」

「何だよ寧音…。うるせぇなぁ~…。」

「お兄ちゃんから電話ってさっきから呼んでるでしょ!!」

「ヒロから!?」



携帯にかけてくりゃいいだろ~…。



あ、携帯部屋か…。



「はいよ。」

「お前ハリウッド行く気あるか?」



俺がハリウッド!?



ってか何で急に!?



「ショーンの新作に抜擢された。お前が。」

「俺が!?でもアメリカ…。」

「大ヒット間違いないし。どうする?ってか行け。社長命令だ。」



でもいつ!?



学校は!?



英梨は!?



「何ヶ月だよ…。」

「半年。もしくは1年。」

「学校は!?」

「休学するか辞めるか。テスト受けらんねぇだろうから。」



休学…。



退学…。



でも願ってもないチャンス…。



「蓮さんと亜香里さんと相談して決めろよ?」

「でも急過ぎ…。」

「こっちも急いで返事しなきゃなんねぇから早めに決断しろ。」

「恭一君はなんて?」

「決まってんだろ。行けって。」



半年から1年…。



マジかよ…。



ヒロの話しによると、ラスベガスが舞台で俺がマフィアのボスになる話しで…。



主演が俺で…。



わけわかんね…。



でも英梨はどうする?



半年も離れる…。



マジ泣くよな?



「寧音、蓮さんは?」

「今日は悠陽いびりに行ってるからもうすぐ帰って来るんじゃない?」

「そう…。」

「何かやらかした?」

「俺…転勤かも…。」

「意味わかんない。映画?」

「おぅ…。ハリウッド…。」

「ハリウッド!?あの龍さんとか涼司とかの!?」

「そうです…。」



ってか行くのか?



いや、行きてぇ…。



「英梨、俺ハリウッド行く…。」

「えっ!?ハリウッッッド!?」

「だから休学して…。半年から1年くらい…。戻って来れねぇ…。」

「…………。」



ほら!!



既に涙目じゃねぇかよ!!



「いやだ~…。」

「泣かせんなよ蒼斗~…。英梨も泣くな。」

「離れたくない~…。」



俺も離れたくねぇけど…。



でも仕方なくね?



英梨は大事だ。



でも今このチャンスを逃したら一生このままかもしれない…。



俺はもっとデカくなりてぇ…。



「英梨が泣いても俺は行く。」

「蒼斗、もう少し優しい言葉かけてやれよ…。」

「だって俺の人生は俺のもんだろ!?俺はまだまだデカくなりてぇんだよ。」

「お前なぁ…。好きな女泣かせて優しい言葉一つかけらんねぇのにデカイ事言ってんじゃねぇよ。」



ヒナ兄だって寧音と双子置いて旅に出たじゃねぇかよ…。



何が違うんだよ…。



「蒼君のバカー!!」

「は!?英梨!?」



どうすりゃいいかわかんねぇ…。



何がダメかわかんねぇ…。



「英梨の気持ちも考えて物言え。」

「わかんねぇよ…。」

「お前はオブラートに包むってことを知らなすぎ。」



オブラート…。



じゃあどう言えばイイんだよ…。



【英梨】



蒼君のバカ…。



もう少し優しい言い方出来ないの!?



追い掛けて来てもくれないし…。



勝手に行っちゃえ…。



「英梨?」

「寧音さん…。」

「まだ泣いてんの?」

「だって…。蒼君は?」

「今蓮さんと話してる。」



やっぱり行くんだ…。



行ってほしくないわけじゃないけど…。



「蒼斗の夢を応援しないの?」

「違う…。イイチャンスだと思うし。行くのは賛成だよ…。」

「じゃあどうした?」

「蒼君は寂しくないみたい…。あたしと離れるの…。」

「ははっ!!そっかそっか!!」



笑わないでよ寧音さん…。



寧音さんも日向さんと離れて寂しかったんでしょ?



「蒼斗素直じゃないから。寂しいなんて口が裂けても言わないよ?」

「それもそうだ…。」

「日向より蓮さん似だからね。」



蓮さん似かぁ~…。



あたしだけこんな気持ちでいるのかと思うと苦しい…。



「寧音さん、あたし…。」

「ん?」

「蒼君がいなくなったらここから出た方がイイの?」



それも心配…。



だってココは蒼君の家だし…。



「普通にいればいいじゃん。英梨だって家族みたいなもんだし。」

「いいの?」

「蒼斗がいなくなってここから出て一人寂しく暮らしたいなら出ていけば?」



それは…。



耐えられない!!



「あたし出て行かない!!」

「よし!!じゃあちゃんと蒼斗と話しなね?」

「うん!!」



寧音さん大好き!!



ちゃんと蒼君と話さなきゃ!!



寧音さんと話してからキッチンでご飯を作った。



蓮さんとの話し合が終わった蒼君…。



「今日のメシなに?」

「ほうれん草…。」

「は!?ほうれん草のみ!?」

「バター炒め…。とツナサラダ。後は寧音さんが作ってるよ…。」



目が見れない…。



なんか気まずい…。



「さっきなんで泣いた?」

「別に…。」

「俺、お前がどうしてもイヤって言うなら行かねぇよ?」



えっ…。



思いがけない言葉…。



何かドキドキする…。



「イヤじゃない…です…。」

「じゃあ行く。どれくらいかかるかわかんねぇけど待ってろよ。」

「うん…。」

「うまっ!!英梨料理うまいな。」

「それツナじゃん…。」

「好きだぞ英梨。」



えぇぇぇぇっ!?



今なんて!?



蒼君から『好き』って言葉が…。



「腹減ったからメシ~!!」

「う、うん…。」



顔が熱くなる~…。



幻聴じゃないよね!?



「蒼君?」

「何だ?」

「頑張って来てね?」

「当たり前。お前置いて行くんだから成功してくる。」



そう言って笑って頭をクシャっと撫でてくれた。



寂しいけど…。



応援する!!



蓮さんは蒼君がハリウッドに行くのを大賛成。



自分の事のように喜んでた。



「蓮さん、英梨よろしくな?」

「まかせとけ。エサ与えとけばいいんだろ?」

「そうだな。後はたまに気にかけてやってくれれば。」

「あいよ。」



あたし、ここにいてもイイんだね。



よかった…。



その後にご飯を食べてお風呂に入って部屋に来た。



「いつ行くの?」

「3週間後。」

「急だね…。」

「仕方ねぇだろ。あの監督すげぇの撮る癖にワガママだって噂だし。多分俺が抜擢されたのも気まぐれとかじゃね?」



そんなもんなのかな…。



寂しくなるなぁ~…。



「切ねぇ顔すんなよ。」

「だって実際寂しいじゃん…。」

「俺がいねぇからって泣くなよ?」



泣くもん…。



会いたくて寂しくて…。



絶対泣く…。



「どこにいても英梨は俺んだからな?」



そう言って抱きしめてくれた。