強い日差しが顔に降り注いでいるお蔭で暑苦しい。
 この上なく怖い夢を見たお蔭で、寝覚めがすこぶる悪い。

「は~~」

 ため息をつきつつ、上体を起こす。
 がしがしと頭を掻いていると、ふと足元が涼しいことに気付いた。

「おばーちゃーん。冷房きつすぎるんじゃない~?」

 言いつつ顔を上げると。

『全くもって、はしたない小娘め。年頃の娘が、そんな足をおっ広げるもんではない』

 足元に、きちんと正座した侍が目に入った。
 息を呑んで、目を見張る。

『何をいまさら大仰に驚いておる。昨日あんだけ喋っておいて』

 ゆ、夢じゃなかった!
 この、『じゃないほう』、ほんとにいたんだ!

 ああ、こんなイケメンな仮面を被ってても、正体は地獄の獄卒なんだ。
 昨日言ってた縁ってのは、私を連れて行くっていう、そういう縁のことだったんだ!!

 ふるふるふると震えていると、侍は、ぺこりと頭を下げた。

『昨夜はすまんかったな。まさかあんなに怖がるとは思わなんだ』

 神妙に謝ってくる。
 しばし黙っていると、顔を上げた侍が、真剣な表情で私を見た。

 おぅ、やっぱりイケメンだ。
 そんな、ちょっと不安そうな目で見られると、いくら『じゃないほう』だって、どきっとするじゃないか。