夕焼けに照らされたお墓への道を、仏壇の蝋燭から移した火を灯した提灯を下げて歩いて行く。
 迎え火のときは暑かったけど、今はそうでもない。

 多分、八郎がいるからだ。
 イケメン冷房機だな。

 あ、てことは、帰りは超暑いんじゃないの?
 うっわ、最悪。

 お墓について、蝋燭から線香に火をつける。

『横着するな』

「こっちのほうが安全でしょうが」

 畳んだ提灯の中に線香を突っ込む私を渋い顔で見つつ、八郎は墓を見上げた。

 そういえば、八郎のお墓はどこにあるんだろう。
 結婚しないまま亡くなったってことだよね。
 うちの過去帳にあったってことは、この中に八郎も入ってるのかな。

 でも、過去帳にあったというよりは、誰かがわざわざ、別紙に書いて挟んだみたいだったし。
 過去帳には入ってないってことか。

 そうだ、あの紙。
 綺麗な和紙に、きちんと書かれてた。
 あれってもしかして……。

 線香を供えながら考えていた私は、は、と顔を上げた。
 夕日が落ちて、微妙な暗さになっている。
 一番物が見えにくい、逢魔が刻。

 ひゅ、と冷たい風が、頬を撫でた。
 振り返ると、八郎がすぐ傍に立っている。