おばーちゃんを見たから、気が済んだってことか。
 明らかに自分よりも年上の子だろうに、やっぱり見ればわかるのかな。
 八郎、自分が孫の勢いだよ。

 それにしても。

「送り火と一緒に帰るってこと?」

『ああ。明日はあの世の釜の蓋が閉じる』

「今は開きっぱってこと?」

『昨日開いて、明日閉じる』

 怖。
 毎日門限設けてよ!

『沙希』

 不意に名を呼ばれ、八郎を見る。
 真剣な表情。

 うわぉ、そんな目で見ないで。
 イケメンに凝視されると、どうしていいのかわからんくなるし。

 ちょっと挙動不審になっていると、す、と八郎が立ち上がった。
 何か、しっかりと向き合うのは初めてかも。

 結構な長身だな。
 この時代の人には珍しいんじゃない?

 剣術やってただけあって、程よく引き締まってるし。
 でもあんまり筋肉質じゃないっぽいのは、病気のせい?

『わしが今年来たのは、お前に引っ張られたからだ』

「ん、何で? 私、八郎のことなんて知らなかった」

 正面から見つめられ、どきどきしながら答える。
 何だ、この雰囲気。
 イケメンに、真剣に思わせぶりなこと言われてるし。

 ちょっとちょっと、ときめきますなぁ。
 八郎が死んでるってのが、心底残念だわ。

『では明日だな』

 イケてる笑みを残し、八郎は、ふい、と祭壇のほうを向くと、すとんと座布団に座った。