うだるような暑さの中、提灯を持ってお墓に行った八月十三日。

「ああ……もう日も暮れたってのに、暑さが全くマシにならない」

 ぶつぶつ言いつつ、お墓前で迎え火を焚く。
 その火を提灯に移して家に持って帰り、十五日にまたお墓に持ってくるのだ。
 微妙に田舎なこの辺りの、お盆の風習である。

「さっさと帰ろう。蚊に刺されちゃう」

 燃えている苧殻に蝋燭を近づけ、火を移して立ち上がる。
 その時、ふ、と冷たい風が吹いた。

「あ、ちょっと涼しい?」

 嬉しくなったものの、気付けばここはお墓である。
 この、『ちょっと涼しい』というのはヤバいのではないか。

 すでに辺りは夕闇が迫っている。
 慌てて私は家路を急いだ。