「あ、いや…なんでいきなり?」



「夜道は危ないですし?」



「だ、だからって伊澄くんに送ってもらうわけには…」



「輝先輩じゃないと嫌なんすか?」



まるで試すように半笑いで聞いてくる伊澄くんに、少しカッときた私は



「お、送ってもらおうかな!!」



いつの間にかそう返事していた。



「んじゃオレ自転車なんで後ろ乗ります?」



「え、あ……」



「重いのなんて知ってますって」



「ぶっとばす」



駐輪場に行くと、ほぼ自転車は残っていなくて、奥の方にシルバーの自転車がぽつんと立っているだけだった。



少しだけサドルの高い、だけど綺麗な自転車。