「恋人同士で夕陽の海ねぇ。先輩もロマンチックなことするんすね」



伊澄くんの言葉に笑ったはずなのに、さっきとは違う乾いたエガオ。



上手く、笑えない。



「そんな顔しない」



伊澄くんが私の両頬をつねる。



だけどその顔は、優しいようで悲しいような、そんな表情で。



「伊澄くん…」



伊澄くんは頬から離した両手を自分の頭の上に置いて。



「なんで想い続けてる人の想いは……報われないんすかね」



自嘲気味に笑う伊澄くんは、まるで自分のことを言っているようで。



「本気になった恋ほど、どうして報われないんすかね」



夕陽を見つめる伊澄くんの横顔は、今まで見たことないくらい寂しくて。



なんて声をかければいいか、私は分からなくなった。