屈み込んだアタシの前に、手が差し出された。


驚いたのは、それが綺麗な手だったからで、顔を上げてさらに驚くことになった。

そこにはとても整った顔立ちの男性がいたから。


彼は今まで見たことがないほど顔形が整っていた。眉は柳眉。伏せられたまぶたには長い睫毛があるし、くっきりと二重の筋がついている。鼻筋は通っていて、高いし、唇はぽってりと肉厚でやんちゃな印象がある。


暗くても、身につけている物が質のいいスーツだとわかった。それなのに、そのスーツを汚すことも構わずに膝を折って屈み込んでくれている。


「困ってるでしょ。取ってあげるよ」

そう言うと、アタシの向かい側に座って靴に手をかけた。

「あっ…ありがと」

がっちり挟まっていたかに見えたのに、男の人の手にかかると、すんなりと抜き取られた。

優しいとも見える靴の扱いに、見た目よりも優しい所があるのだと気がついた。