キッチンから戻った遥香はフルートグラスとシャンパンを手にしていた。

良くわかってる。アタシも持参したのはシャンパンだ。黄金色の液体には日常を忘れさせてくれる物がある。アタシの持参した紙袋の中味を察した遥香が、「………まずはこっちから試して」


そう言いながらアタシのグラスにシャンパンを注いでくれた。ふわっと香りが立ち、泡が上るのを見ていたらテンションが上がった。ボトルを奪ってラベルを見ると普段口に出来ないランクの物だった。



「……酔って味がわからなくなる前に…ね」

くすりと笑う仕草も上品だ。アタシも遥香のグラスにシャンパンを注いだ。




「乾杯しよっか」

「……ふふっ何に?」

「アタシ達の明日に!」



カチンと音をさせてグラスを合わせてから、お互いにグラスを傾けた。