一言も言葉に出来なかった。

どうやって慶太郎の家を調べたんだろう、とか。
タイミングよく、二人しか居ない時を、わざと選んだの、とか。

頭で思うことは、雄大が去ってから。


ここが自分の家なら、今すぐにでも横になりたい。
だけど、ここは住んで数日の慶太郎の家で。

僅かな居心地の悪さからなのか、私の体は座ったまま首を響へと向けるだけ。


「アイツ、わざとだな」

「……わ、ざと?」

「惑わされんな。アイツの思う壺だ」


視線は合わさず、前を向いたまま喋る響は、言い終わるとその場でまたすくっと立ち上がる。

何も考えず、その動作を見つめながら、“わざと”の意味を考えようとした。