私には気付いていない。

のそのそと、体を引きずる様に倒れていた人が起き上がると、何とかバイクに乗り、


「お前覚えてろよ」

「今度は殺してやるよ」


捨て台詞を吐いて、エンジン音は遠ざかっていった。


ーーはっ!!

祐也!!ここからじゃ見えないとこに居るのか、目の前の室外機を乗り越えて、やっと隙間から体を出すと。


「祐也!」

「すいません、ただの喧嘩です。はい。友達なんです。大丈夫です」


パン屋のドアを開けて、中の誰に言ってるのか分からないけど、警察は呼ばなくてもう平気だ、と伝えていた。

名前を呼んだ私に気付いた祐也は、


「なんつー顔してんだよ。お騒がせしてすいません」


私の顔を見て、眉を下げて笑い、パン屋の扉を閉めた。