「まーーーい!!!!」
俯く私の耳に届いたのは。
「しっかりしろ!!!!」
声に顔を上げ、目線の先に居たのは。
目を真っ赤にさせた……
「……っく、」
さゆりさんだった。
あんな顔。
させてしまってごめんなさい。
喉が痛い。鼻もツンとするし、視界もボヤける。
「続いて、二年生の第一走者。お願いします」
体操服の首もとを引き上げて、涙を拭った。
まるで汗を拭うかの様に。
応援していた様にもとれる、さゆりさんの行動が。
その機転が有り難かった。
今は。何も考えないで、走ろう。
ようやく落ち着きを取り戻した心臓は、もう嫌な音ではなかった。