男「うわぁぁぁ化け物!」


 化け物?



 僕は叫び声が聞こえた方向に走りだす。



 立ち込める血の匂いに鼻孔がくすぐられる。



 なんだ………?



 そこには20人くらいの人ともわからないモノ。


 屍の上に立つ少女がいた。


 辺りは血の海で、少女は返り血で紅く染まっていた。


 髪の長さ、背格好。それはまさしく………



総「美夜ちゃん……………?」



 思わず口に出していた名前、少女は勢い良く振り向いた。




 !!!!!




 顔立ちは完全美夜ちゃんだ。



 だけど、今の美夜ちゃんは余りにも、美しかった。



 闇夜に光る金色の瞳、風になびく髪。


 うねる二本の尻尾、月の光を反射させ光る八重歯と爪。


 鼻頭は小さく茶色に染まり、尖った耳が顔横の髪から飛び出している。




 彼女の顔についた血が、何故か美しさを際立たせる。




 徐々に金色の瞳が見開かれた。




 これ、全部美夜ちゃんが殺ったのか?




 僕が視線を戻すと、闇に消えようとする背中が見えた。




総「待って!美夜ちゃん!」



 僕は慌ててその背中を追いかけた。