オレはスマホをポケットに仕舞うと、部屋を出て玄関へ向かい、靴を取って再び部屋へ戻る。

そのまま窓を開け、1階にあるリビングの屋根に乗り移る。

屋根には父さんが日曜大工で使う梯子がかけられていて、それを使って地面に降り立つ。

父さんや母さん、2つ上の兄さんは寝ている時間だから、家の外に出たことは気が付かれない。




家の小さな門を開け、いつも深夜にホクと会う時使う場所―――公園へ向かう。

オレの方が公園に近いから、オレの方が早いと思うけど。

やっぱり思った通り、公園には既にホクが到着していた。





「遅かったスね」


「これでも早く来た方だ。
ホクのように早く来ることは出来ねぇよ」


「俺だって普通スよ」


「お前の普通は普通じゃない」




ホクのお祖父さんは、9時には寝てしまう。

そのためホクは堂々と、玄関から外に出ることが出来る。

オレのように、いちいち玄関へ靴を取りに行ったり、梯子を使って降りることがないのだ。





「そういや、俺の許可なく勝手に、転校生に俺のこと話さないでくれないスか?」


「ホクのこと?」


「俺がじーちゃんと住んでいるってこと。
俺のこと、転校生に言ったの、キクっスよね?」


「あー、そういえば言ったな。
なりゆきだよ、ごめんな」


「勝手に人の個人情報言うの止めてくれないスか?」


「ごめんごめん。
気を付けるって、ハハッ」


「反省しているように見えないんスけど?」