「母さん。
その如月さんって方、今家の中にいるの?」
「違うわよ。
同居している方がもうすぐで帰る時間だって言っていたから、その方も一緒にどうですかって誘ったら、
如月さん、その方を探しに行ったのよ」
あたしは自分より少し背の高い如月を見た。
たまたま同じ名字なのかしら?
首を傾げたところで、自宅の前に黒塗りの乗用車が停まった。
運転席から下りてきたのは、眼鏡をかけたかなり若そうな男性だった。
黒髪で黒縁眼鏡で、ワイシャツに黒いジャケットを羽織る、黒ずくめの人ではあるけど。
「申し訳ありません西川さん。遅れてしまって」
黒ずくめの男性は、綺麗にお辞儀をした。
その美しい姿に、あたしは思わず見とれた。
母さんの知り合いなのかな…?
「……じいちゃん」
「……は?」
隣に立つ如月が、呟く。
その後静かな住宅地に、あたしの叫び声が響いた。