『キクくんを待っているの』


『……そうスか』


『如月くんはどうしたの?忘れ物?』


『……そうスけど、何か?』


『ううん、何でもない』




如月くんは自分の机の中に手を入れると、小さな紙きれを取り、ポケットに突っ込んでいた。

『何だろうか、あの紙は』と思い首を傾げていると、普段話しかけて来ない如月くんが後ろを向いて、

私にあの眠たそうな瞳を向けた。




『向こうが好きかもわからないのに、なにゆえ傍にいられるんスか?』


『……え?』


『キクが須藤を好きかなんて、わからないじゃないスか。
まことは婚約者っていう関係を嫌がっているかもしれないスのに。

どうしておたくは、それでも傍にいようと思えるんスか』




確かにそうだ。

キクくんが私を好きかなんてわからない。

でも私はキクくんが好きだから―――




『キクのことを、自分を守るために利用するのなら、諦めた方が良いんじゃないんスか?』


『自分を守る……?』


『まことは寂しいんじゃないんスか?
教室で男だけに囲まれて、ぼっち生活を送るのは』




私は言葉を失った。

だって、誰にも言っていなかったから。

キクくんにも、親にも。




私が教室で、男だけに囲まれ、女友達など存在しないこと―――